上部消化管腫瘍に対する最新の内視鏡診断と治療

2019年10月23日 maki (閲覧数:4769)

三浦義正Dr.

 真木会「せんだんの会」は2019年10月2日、ホテルメトロポリタン高崎にて自治医科大学消化器内科講師、三浦義正先生による健康講座「上部消化管腫瘍に対する最新の内視鏡診断と治療~病気の早期発見と低侵襲治療の意義~」を開催したしました。

 三浦先生は広島県出身。1999(平成11)年、自治医科大学卒業後、県立広島病院、庄原赤十字病院、八幡診療所などの勤務(へき地医療)を経て、2009(平成21)年には同大消化器内科助教、2015(平成27)年には消化器内科講師にとなられました。上部消化管の内視鏡診断、消化管ESD、特に上部ESD(咽頭、食道、胃、十二指腸)のエキスパートです。真木病院では毎週水曜日に内視鏡検査・治療を行っています。
※ESD(Endoscopic Submucosal Dissection)=内視鏡的粘膜下層剥離術

 自治医科大学で初めてESDが行われたのは1999年。以降、上部消化管の内視鏡治療は多様化し、特に胃で発展していったESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)により従来の方法では切除が困難であった病変も内視鏡的切除が可能になったこと、そして上部消化管の臓器(咽頭~十二指腸)はなくなると機能障害が強くでるため、この世界では内視鏡医と外科医または耳鼻科医などが積極的に連携を図ることで、より侵襲の小さい医療が行われてきていることを強調されました。

 三浦先生は「内視鏡医が内視鏡検査を勧めるのは、ただがんを発見するためではなく、内視鏡で直せるがんを発見するため」と言い切ります。この例として、印環細胞がん(34歳、女性)の症例を紹介されました。この女性は人生初の人間ドックで「内視鏡で治せるがん」を発見してもらえたラッキーな人です。「がんは早期に発見すれば直してもらえる」と思っていますが、三浦先生は「早期胃がんは意外に見逃されているのではないか」と危惧されています。

 従来通り「がんは赤色」と探しているだけでは「内視鏡で直せるがんを発見できない」というのです。「ここです」とスライドの映像を指す三浦先生。先生がおっしゃる「早期がん」は私たちには見えません。素人に見分けられないのは当然ですが、赤くなるまで見つけられなければ手遅れになることもあるそうです。胃炎がある人の場合などさらに大変で「砂に隠れたカレイを探すようなもの」と例えられました。しかし最近は“色を強調する内視鏡”、特にLCIという内視鏡観察モードを使うことによって、普通の内視鏡では気づけない超早期のがんの発見が期待されています。この内視鏡も真木病院にはすでに導入されており、真木病院の内視鏡分野は最先端をいっており、内視鏡検査を受けられる方も安心してほしいと説明されました。

 また高齢の胃がん(84歳、男性)を例に、手術後のベネフィット(機能温存・QOLの維持)がリスク(手術・術後の変化・転移)を上回るなら、仮に転移の心配を残したとしても内視鏡による手術を選択する方がメリットが大きいことを解説されました。

 故逸見政孝さん(胃がん)、王貞治さん(胃がん)、宮迫博之さん(胃がん)、つんくさん(咽頭がん)、堀ちえみさん(舌がん、食道がん)、最近亡くなった故萩原健一さん(GIST=消化管間質腫瘍)についても触れられました。

 胃がんはピロリ菌、食道がんはタバコとお酒。お酒については飲むと顔が赤くなる人は要注意とのアドアイスには「赤くなるけどどうしよう」とつぶやく声が聞こえてきました。

 三浦先生は「熟練した内視鏡医が最新の内視鏡を用いれば、内視鏡で直せるがんを発見できる。真木病院には内視鏡のエキスパートが多くいて、内視鏡関係では大学病院にしかないような最新の機器がすべて揃っている。内視鏡治療はただ切ればよいというものではなく、内視鏡手術後に必要となるフォローにもこの分野のエキスパートである和田正浩内視鏡部長が対応してくださり、長期的にも地域に根ざした医療を提供している」と、内視鏡検査・治療を委ねる病院として太鼓判を押されました。

健康講座は年2回、春と秋に開催しております。どなたでもご参加いただけますので、ご興味をお持ちの方はお気軽にお問い合わせください。