歴史に学ぶ糖尿病治療

2016年12月10日 maki (閲覧数:7202)

小浜智子Dr.

 真木病院は2016年10月27日、ホテルメトロポリタン高崎で当院糖尿病内科部長、小浜智子医師による健康講座「歴史に学ぶ糖尿病治療」を開催いたしました。

 小浜医師は東京女子医科大学を卒業後、同大糖尿病センターにて平田幸正先生、大森安恵先生に師事した糖尿病、糖尿病妊婦のエキスパートです。

 当日は疾患を見つけにくい臓器である膵臓の検査方法の変遷、さまざまな検査機器、そして須山先生が現在、真木病院で行っている検査、診断法についてお話しになりました。

歴史で学ぶ糖尿病治療

1)糖尿病の歴史

 糖尿病は文明病ではありません。古くは紀元前エジプトのパピルスに、蜜のような甘い尿を出す病気と書かれています。有史以来では、約2000年前、トルコのカッパドキアの図書館で発見された医学書に記述があります。「食べても食べても痩せて、手足が尿の中に溶けだし、やがて死に至る病」と書かれています。
 我が国では、歴史上の人物では、藤原道長が最初と言われています。道長は源氏物語の光源氏のモデルの一人ともいわれ、「この世をば我が世とぞ思ふ望月のかけたることもなしと思えば」という、有名な句にもあるように、栄華、贅沢の限りを尽くした人物としても知られています。その道長にしても、あるいはその道長だからこそ糖尿病になり、最後は網膜症のため、手のひらのものしか見えず、頻尿、失禁,幻聴、幻覚に惑わされ、背中に出来た大きなおできと高熱のため命を落とします。
 近代医学での輝かしい歴史は、何といっても、カナダの医学者バンチング博士と当時大学院生であったベストの1981年のインスリンの発見でしょう。インスリンの発見により、糖尿病治療は劇的な変化をとげます。それまで死ぬべき病であったものが、その後120年にわたり多くの人が命を永らえることが出来ました。その功績が讃えられ,後にノーベル生理学賞が授与されます。

2)糖尿病の治療―怖いのは合併症―

 糖尿病は進行すると①手足のしびれなどを起こす神経症②視力障害を起こす網膜症③むくみなどを起こし引いては透析導入にまで至る腎症④ひどい時は手足の腐る壊疽などの糖尿病性合併症を起こします。しかし、糖尿病の始まりはむしろ「無症状」が症状と言えます。症状がなく、知らないうちに進行する怖い病気といえます。従って、人間ドックや検診で見つかることがほとんどです。
 糖尿病と診断されたら、まず食事療法です。1に食事、2に運動、3,4が無くて、5に薬(インスリンを含めて)です。玉ねぎやココアなどの民間療法は基本の治療を守ってするならいいのですが、それだけをするのは、危険ですので注意してください。糖尿病治療は専門医制度があります。専門医の治療指導の元に正しい管理を行いましょう。

3)真木病院糖尿病患者会「せんだんの木の会」

 現在真木病院では、糖尿病専門外来(曜日は外来診療のページでご確認ください)を行っております。現在約200名近くの定期的に受診されています。患者会は2ケ月に一度土曜日の午後患者会を行っています。今年11月は第13回目に当たり、「歩いて治そう糖尿病」と題して、スタッフ共々用水路に沿って、万歩計を持ち、消費カロリーを計算しながら30分近く歩きました。前後で血糖、血圧、体脂肪を測定しました。幸い天候にも恵まれ、それぞれのペースで完歩しました。
 せんだんの木の会は糖尿病の方でなくても、参加できます。予約もいりませんし、無料です。

健康講座は年2回、春と秋に開催しております。どなたでもご参加いただけますので、ご興味をお持ちの方はお気軽にお問い合わせください。
小浜先生の糖尿病専門外来の診療日は外来診療のページでご確認ください。