内視鏡

内視鏡診断

1)概要

 近年、内視鏡治療技術は大幅に進化しており、胃癌・大腸癌・食道癌などの患者様では、内視鏡治療により外科的手術を回避できる方が増加しています。
 しかし、高度な技術を用いれば、全ての癌が内視鏡治療で根治できるわけではありません。内視鏡で切除可能であっても、癌の進行程度によりリンパ節の郭清などを目的に外科的手術が必要になる場合もあります。
 当院では、治療前の精密検査で正確に癌の進行程度(病期・Stage)を診断するため、拡大内視鏡検査や超音波内視鏡検査などを行っています。診断精度向上を目的に、特殊な光(BLIやNBI)を使用する場合もあります。

【写真下】平坦型の小さい大腸ポリープです。通常の内視鏡観察【写真下左】でも確認できますが、NBIによる内視鏡観察【写真下右】ではポリープが茶色の領域として観察されます。NBIを単独で使用した場合、大幅に病気の発見率が向上するわけではありませんが、このポリープのように視認性が向上する病気が多く、診断能力向上に寄与します。(NBIは拡大内視鏡と併用すると非常に効果的です。詳しくは拡大内視鏡の項をご覧ください。)


 

2)拡大内視鏡(Magnifying Endoscopy)

 当院では主にハイビジョン内視鏡を使用しており、鮮明に病気を観察することができます。しかし、内視鏡で胃癌・大腸癌・食道癌などの進行程度(病期:Stage)を診断し、内視鏡治療が可能か、それとも外科的手術をした方が良いかなど、適切な治療法を高い精度で提案するためには、拡大内視鏡による精密検査が非常に有用です。
 拡大内視鏡では、癌などの病気の表面構造を、顕微鏡を使用するように拡大して観察することができます。通常の内視鏡に比べ80倍程度まで表面構造を拡大し観察することが可能で、粘膜の表面に存在する直径0.01mm程度の毛細血管まで観察することができます。拡大内視鏡検査では、癌などの病気の表面構造を細部まで観察することができるため、より高精度の内視鏡診断が可能になります。

【写真左】4cm程の大きい大腸ポリープで癌の可能性があります。一般的に大腸癌では大きくなるほど浸潤癌の可能性が高くなります。このポリープは大きいですが、通常の内視鏡観察ではびらんや潰瘍の形成、ヒダの集中を認めず、表面だけの癌(粘膜内癌)の可能性があると判断し、拡大内視鏡による精密検査を行いました。


 
【写真下】NBI併用拡大内視鏡観察(写真左)では、ポリープ表面の毛細血管が黒色で細長く描出されます。毛細血管の構造に異型を認めましたが高度ではないため、初期の根がはっていない癌(粘膜内癌)と診断しました。染色法による拡大観察(写真右)では、表面の腺管構造に異型を認めましたが腺管の破壊はみられず、粘膜内癌と診断しました。


 
【写真左】粘膜内大腸癌は内視鏡治療で根治可能ですが、EMRやポリペクトミーなどの一般的な内視鏡治療では2cmを超える病変の切除は困難で、大型の粘膜内癌の治療には外科的手術が必要になることがあります。この病変は4cm程ですが粘膜内癌が想定されるため、大型病変の内視鏡治療が可能となるESDという方法で内視鏡的に切除し、外科的手術を回避することができました。切除後の病理診断では粘膜内癌で、ESDによる内視鏡治療で癌を根治することができました。


 
【写真左】2cm程の大腸ポリープです。表面にびらんを認めるため、治療方針を精密に判断するためには拡大内視鏡による精密検査が必要と判断しました。


 
【写真下】拡大内視鏡の画像です。NBI併用拡大観察(写真左)では、毛細血管と表面構造の破壊を認めました。染色法による拡大観察(写真右)でも、表面構造の破壊が見られました。いずれの方法でも、表面構造の破壊が見られたため、浸潤性の大腸癌の可能性が高いと診断し、外科的手術による治療をお勧めしました。手術後の病理診断では、粘膜下層の深くまで浸潤した癌で、手術による治療が適切でした。


 

3)BLI・NBI

 近年、BLI(Blue LASER Imaging)やNBI(Narrow Band Imaging)という機器が開発されました。BLIやNBIでは、通常内視鏡で使用する白色の光ではなく、血管の中を流れている赤血球に吸収されやすい特殊な光を内視鏡先端から発し観察を行います。

【写真左】NBIでは通常の白色光ではなく、青色の光を使用して内視鏡観察を行います。


 


 
【写真上】NBIは専用の光学フィルタにより、狭帯域化された 415nmと 540nmの2つの光を使用します。これらは赤血球に存在するヘモグロビンに強く吸収される波長であるため、毛細血管などの血管像の描写には最適で、粘膜表層に存在する血管の走行状態を強調表示させることができます。

 BLIやNBIを用いた内視鏡観察では、癌などが発見しやすくなることがありますが、通常の内視鏡検査でBLIやNBIを併用した場合、癌の発見が格段に向上するような万能な機器ではありません。BLIやNBIを拡大内視鏡と併用すると格段に診断能力が向上するため、当院では拡大内視鏡とBLIやNBIを併用し精度の高い精密検査を行っています。

【写真下】食道の内視鏡画像です。非常に小さい病気であるため通常観察では病変の存在はほとんど認識できませんが、青矢印の部位に4mmの大きさの腫瘍があります。


 
【写真左】NBIを併用し内視鏡観察を行うと、青矢印の部位に茶色の領域を認めました。このように、NBIを内視鏡検査に併用することで、癌などの病気が発見しやすくなることがあります。


 
【写真左】NBI併用拡大内視鏡で精密検査を行いました。茶色の領域を拡大観察すると、腫瘍表面の毛細血管が茶色の糸くず様に観察されます。腫瘍内の毛細血管に異型があることが判明し初期の癌である可能性が高いと診断しました。その後、内視鏡治療を行いましたが、顕微鏡による細胞の検査(病理診断)では上皮内癌で、内視鏡治療により癌を根治することができました。


 

4)超音波内視鏡検査(EUS)

 内視鏡には直径3mm程のトンネルがあり、直径2mm程の棒のような形をした細径超音波装置を通し、内視鏡先端から出した超音波装置を癌などの病気に近づけます。超音波内視鏡検査を行うことで、内視鏡観察では見ることができない、病気の垂直方向の広がり(癌の深さ)を観察します。
 BLIやNBIを併用した拡大内視鏡観察を行っても病気の垂直方向の広がりを推定することが困難な場合では、超音波内視鏡検査が有用です。また、拡大内視鏡と超音波内視鏡を併用することで、更に高精度の精密検査が可能になります。

【写真左】1cm程の大腸ポリープです。表面にびらんがあるポリープでは、時に浸潤性大腸癌の場合があり、拡大内視鏡での精密検査が必要と判断しました。


 


 
 NBI併用拡大内視鏡画像【写真(1)(2)】と染色法による拡大内視鏡画像【写真(3)(4)】です。小さい病変ですが、いずれの方法でも拡大内視鏡検査では表面構造の破壊が確認できます。根が深くはっている大腸癌(浸潤癌)が疑われたため、引き続き超音波内視鏡検査を行いました。

【写真左】超音波内視鏡検査では、粘膜下層の深部まで深く根がはった浸潤性大腸癌と診断しました。1cm程度の小さい病変のため内視鏡治療で切除可能ですが、根治性が低下する可能性が高いと判断し外科的手術による治療をお勧めしました。


 
【写真左】手術後の顕微鏡(病理)写真です。病理診断では、粘膜下層深部への浸潤癌で、外科的手術による治療が適切であったことが判明しました。病理写真は治療前に行った超音波内視鏡の画像とほぼ同様で、超音波内視鏡による精密検査が、適切な治療方針の提案に非常に有用でした。


 

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